Field Study of International
Business Department

国際経営学科のフィールドスタディ

2023年度 海外フィールドスタディ(台湾) 実施報告

2023年度 教員による海外フィールドスタディ(台湾)報告 : 西原 博之

2023年度の海外フィールドスタディ(台湾)は、2月下旬より約2週間の日程期間で行われた。経済学部の国際経営学科生、経営学科生、それぞれ3名の計6人が参加した。昨年度はワクチン接種証明を取得して活動に参加するよう、新型コロナ感染対策に注力した。しかし、本年度は、食品関連の工場見学の際に、簡易検査と社内ではマスクを着用するように要請された程度で、かなり緩和された状況となった。

本年度は、旧暦正月休みが明けた翌週より東京羽田から台北松山に向った。日本と台湾の間には1時間の時差があるとはいえ、午前中に台湾に到着した。入国審査を終え、台北MRTを乗り継いで台湾師範大学のキャンパス内にある宿舎に向かった。東京との温度差は10度以上あって、日中は摂氏30度近くあったことから、昼時には台湾で有名なマンゴーかき氷など、冷たいデザートをほおばる学生もいた。

翌日より同大学国語教学センターが開講する講義に参加した。明学卒業生、東呉大学で長年教えている長田先生より「日本人教師がみた台湾社会」という内容で、時々明学での話題を挟みながら、日本と台湾の比較や台湾社会の変遷に関して講義を受けた。午後は、日本台湾交流協会を訪問、愛媛県から派遣されている門田氏より、広報活動という立場から台湾での「日台友情」に関する活動の紹介、また、自らが台湾各地を巡って体験したことなど、お話があった。

3日目は、台湾師範大學の楊先生より、グローバル化と中国(華人)社会という内容で、「華人」と「中国人」の定義、それら移民の時期の違い、中国の経済発展とグローバル化への影響について講義を受けた。午後は、台湾味の素を訪問、同社の台湾進出の歴史と台湾を含む中華圏の市場における事業の動向についてうかがった。なお、質疑応答の際に、学生が就職活動へのアドバイスを求めたところ、同社幹部の方より、味の素の経営理念を事例に、それへの共感が大切という貴重なアドバイスを頂いた。

4日目は、早朝より台湾の在来線である台湾鉄路(TRA)に乗車、1時間以上かけて新竹県にある台湾車輛公司を訪れた。同社は鉄道車両を生産しているが、同社がメンテナンスしている車輛に乗車することができた。午後は、台北に戻り、味の素グループ会社で、日本などから商品を輸入、販売している台素社を訪れた。同社では、香料、合成皮革、半導体材料など、多岐にわたる材料や商品を扱っているが、若い担当者がプレゼンを行い、交流を図った。

5日目は、元培医事科技大學の周先生より、「中華伝統思想と台湾企業の経営管理」というテーマで講義があった。国際的に著名な台湾企業の多くが、伝統的な中華文化思想を応用して拠点づくりをしている事例を幾つか紹介し、その意図や背景について解説があった。午後は、台湾モスバーガーの台北事務所を訪れた。同社が台湾の大手電機メーカーと合弁企業を設立し、発展してきた歴史を紹介、商品開発では、現地の人が好む味付けだけでなく、日本を意識した商品開発や台湾人が知る日本の人気キャラクターとのコラボなど、台湾市場への浸透に注力し、ビジネスを展開しているとのことであった。

6日目は、本学より名誉博士号を授与された故王金河医師について、台湾師範大学の講義に遺族が登壇し、王医師が明治学院など、日本留学で学んだこと。台湾に戻って地元の風土病である烏脚病(黒足病)の治療に尽された半生に関する体験談を聞いた。午後は、東呉大学を訪問、ダウンタウンキャンパスでは商学研究科、国際経営学科の学生と交流した。次は、交流した同大学生が本学を訪問し、交流を深めたいということだった。午後は、メインキャンパスに赴き、日本語学科を訪れて長田先生の学生と交流、交換留学生として本学を訪問しており、台湾に帰国したばかりの学生も参加した。後に台湾最大級の士林ナイトマーケットに案内され、一緒に台湾式屋台で飲食をした。

7日目は、週末限定開催の玉花市場(フラワーマーケット)を散策した。そこでは、台湾を代表する胡蝶蘭だけでなく、盆栽やや桜の植木はもとより、中華圏独特のラッキーグッズも多く販売されていた。フラワーマーケットを後に、台北を代表するショッピングモールである微風広場(ブリーズモール)本店を訪れた。最初に同社の企業博物館を訪れ、もともとは、戦前よりラムネやサイダーの生産、販売から発展したことを知った。その後、スーパーを訪れ、担当責任者より、日本から空輸された高級果物や生鮮食料品などを陳列、販売していることをうかがい、どのような顧客層が購入するのか尋ねた。翌日は、自由活動の日であり、台湾の有名大学のキャンパスや台北にある著名な廟を訪れ、散策したりした。中には、占い横丁を尋ね、人生の迷いについて相談する学生もいたようである。

9日目は台湾師範大学の宿舎をチェックアウトして台北駅に向かい、高速鉄道(HSR:新幹線)で台南に向かった。台南には、もう1つの協定校である長榮大學を訪れた。同大学の国際交流及び日本語学科の河村先生とその学生、同大学の日本人交換留学生らと交流し、後に台南シャングリラホテルに戻って宿泊した。

10日目は、早朝に簡易キッドで新型コロナ陰性を確認してから、統一グループと合弁事業を手掛けるキッコーマンを訪問、醤油の生産工場を見学。その後に、会議室に案内された。そこでは同社(統萬)の立ち上げの経緯と近年の台湾における醤油販売の動向、新型コロナ感染拡大以降、調味料の開発が進んだことなど、話を聞いた。同社を後にして烏山頭ダムを訪れ、八田與一の銅像や珊瑚潭(さんごたん:烏山頭ダム風景区)などを散策した。その後、烏脚病紀念館を訪れ、もともと診療所だった場所を紀念館にしていること。また、そこには、2011年末に明治学院大学から名誉博士号を授与された王金河医師について、学位授与式で授与された賞状や贈答品が飾られていることなど、担当者から紹介があった*。

11日目には、遊覧バスで台湾中南部の嘉義にある阿里山国家公園の太平雲梯を訪れ、吊り橋から景色を楽しんだ。次に、台湾茶を生産する茶畑を訪れ、農家の山飯を頂いた。後に、生産者より、生産する台湾茶の種類の説明、お茶の淹れ方の作法を学んだ。その後山を下り、中世の大航海時代に台湾の貿易拠点だった安平(アンピン)を訪れ、オランダが築いた安平古堡(ゼランディア城跡)、欧州や日本が築いた貿易商館(跡)などを見学し、欧米からの観光者が多いことに驚いた。

12日目は、遊覧バスで台湾南部を観光した。最初に恒春の後壁湖漁港を訪れ、漁港飯を頂いた。食後に近くにある星砂湾を訪れた。そこから墾丁國家公園に向い、台湾最南端の鵝鑾鼻(ガランピ)の灯台を訪れた。その後、東に上り、太平洋沿岸が望める龍磐公園を訪れた。同地がバシー海峡と太平洋の両方に面する地理的な重要性に位置することを確認した。後に、南湾を訪れ、燦燦と輝く太陽、青い海、白い砂浜という、典型的な夏の景色を味わった。

13日は最終日である。2022年にHSR台南駅前にMITSUI OUTLET PARK 台南(三井系アウトレットモール)が出店したので、ショッピングモールを見学した。お昼過ぎ、HSR台南でHSRに乗車して2時間程度で台北に到着、MRTを乗り継いで台北松山空港に到着し、帰国の航空便に乗って東京に戻った。

今回の海外フィールドスタディは、2週間近くに及んだため、参加メンバーの中には途中で体調を崩し、プログラムに参加できなかった者が複数いた。海外フィールドスタディのような実習活動にあたっては、日々の健康管理の大切さを実感した。

最後に、旧暦正月明けの忙しい中にも関わらず、我々の訪問を受け入れて頂いた関係機構、企業、大学への訪問では、貴重な時間を割いてご対応頂いたこと。この場を借りて、本学経済学部の海外フィールドスタディを支援して頂いた方々に感謝を申し上げます。
加えて、今回の海外フィールドスタディでは、台湾南部の旅程を引率して頂いた南台科技大学の荘勝雄先生及び同大学の数人の学生にも各活動に同行してもらい、同世代の学生と日を跨いで交流ができたことは、何よりも貴重な体験となったと確信している。

日台間には正式な国交が結ばれていないものの、日本にとって、モノ、カネ、ヒトの交流という点では、実質的に屈指の位置づけにあり、重要なパートナーといえる。この海外フィールドスタディを通じて、それを実感することができたこと。今回の活動を通じて、僅かとはいえ、日台間の交流がさらに促進されることを期待する次第である。

※関連URL
2011年12月8日「烏脚病」の治療に尽力した医師、王金河(Wang King-Ho)氏に明治学院大学名誉博士学位を授与します

実施プログラム

2024年2月18日-3月1日

第1日
2/18(日)
午前 羽田国際空港第3ターミナル、チェックイン(CI-223)
午後 台北松山国際空港着、師範大学推広センター 宿舎チェックイン
第2日
2/19(月)
午前 講座(1)長田正民講師「日本人教師がみた台湾社会、日台交流と今後の展望」
午後 日本台湾交流協会訪問
第3日
2/20(火)
午前 講座(2)楊秉煌講師「グローバル化と中国人、世界の華人社会入門」
午後 台湾味之素訪問
第4日
2/21(水)
午前 TRA台北ー新豊、台湾車輛公司訪問
午後 台素公司(味の素関係会社、化学材料関連貿易・販売会社)訪問
第5日
2/22(木)
午前 講座(3)周志川講師「中華伝統思想と台湾企業の経営管理」
午後 台湾モスバーガー(摩斯漢堡 MOS Burger安心食品服務)訪問
第6日
2/23(金)
午前 講座(4)烏腳病紀念館関係者、「明治学院大学名誉博士、王金河医師の生涯」
午後 東呉大学商学部国際経営学科、日本語学科と交流、士林夜市
第7日
2/24(土)
午前 建國南路、休日フラワーマーケット
午後 ブリーズモール本店、ブリーズスーパー(微風超市 復興路店)
第8日
2/25(日)
午前 自由活動
午後 自由活動
第9日
2/26(月)
午前 宿舎チェックアウト、台南移動
午後 台湾新幹線(HSR833)14:11 台北―台南16:11、長榮大學交流、ホテル着
第10日
2/27(火)
午前 統萬(キッコーマン)合弁企業訪問、烏山頭ダム、烏脚病紀紀念館
午後 八田与一銅像、烏山頭ダム見学、市街地、林百貨、赤崁樓
第11日
2/28(水)
午前 南台科技大學流通及びマーケティング学科と交流、太平雲梯、台灣茶畑見学
午後 台南安平、ゼ―ランディア古城、安平老街、貿易商館跡等、ランタンフェスティバル見学
第12日
2/29(木)
午前 台湾南端、恒春、 墾丁公園 、後壁湖漁港、星砂湾、鵝鑾鼻(ガランピ)灯台
午後 龍盤公園大草原(太平洋岸)、南湾、台南市街地
第13日
3/1(金)
午前 台湾新幹線(HSR646)13:48台南-台北15:33、MRT台北駅-
午後 台北松山空港 (CI-222)18:25-22:05 羽田空港着、解散

PHOTOレポート


  • 日本台湾交流協会、台北事務所の門田は、広報の面から日台交流業務に携わっているとのことだった。

  • 台湾味の素の営業活動は、ブランド、情報、陳列についての意識を心掛けているという。

  • 台湾車輛の生産ラインでメンテナンスが必要な車両を見学。

  • 台素の徳永総経理より、味の素の歴史の紹介があり、後に複数の若手担当から、それぞれ業務の紹介があった。

  • 台湾の外食市場の近況と日系外食企業が台湾に進出している旨、モスバーガーの派遣マネジャーからお話があった。

  • 東呉大学阮(Roan)商学部長とその大学院生の交流、5月下旬に来日を予定、再度の交流を誓った。

  • 東呉大学商学部、国際経営及び貿易研究科の学生との交流。同大学に留学する日本人学生も参加した。

  • 東呉大学の長田先生と教え子である日本語文学科生と士林夜市で台湾名物の牡蠣オムレツ食した。

  • ブリーズスーパー本店を訪問、九州直送の商品を試食させてもらった。

  • 高速鉄道で台南に到着、長榮大學を訪問、日本教育センターの河村先生、学生、交換留学生と交流した。

  • 統一グループと合弁事業を手掛けるキッコーマンを訪問、醤油の生産、包装工場を見学

  • 台南、北門の烏脚病紀念館を訪問。故王金河医師は風土病の無料診療で貢献、2011年に本学から名誉博士号を授与された。
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  • 阿里山国家公園の太平雲梯を訪問、台湾茶の生産者を訪れ、お茶の種類や淹れ方等の作法を学んだ。
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  • 旧正月の台南でランタンフェスティバルが開催されていた。関羽を祀る祀典武廟を背景に記念写真。
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  • 南台科技大学の学生の案内で、プライベートビーチのような星沙湾を案内してもらった。
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